後編:お菓子作りが辿り着く場所
愛娘 綾子さんの合流と新たな展開
昨年、モンパリに心強いスタッフが加わりました。知重子さんの愛娘、綾子さんです。
「お店で一緒に働く上で、綾子さんはどんな存在ですか?」とお聞きすると、「頼もしい」との答えが返ってきました。
「パソコンとか、私が苦手な分野を助けてくれるし、なにより彼女なりの熱意を持って、一生懸命やってくれているのが頼もしい。でも私から見たらまだまだです。まだ固いですね、いろんな意味で(笑)」
綾子さんの合流を機に、新しいオーブンを導入し、カステラなどの新しいお菓子にもチャレンジをするようになり、お客さんの評判・売上ともに上向きとのこと。手厳しい評価をしつつも、綾子さんが、モンパリに新しい風と熱意を持ち込み、新たな展開を見せているのは間違いないようです。
そんな綾子さん目下の目標は、北海道産の小麦を使って、しかも添加物を使用しないで美味しいシフォンケーキを作り上げること。(※綾子さんの姿や想いは、次回Vol.2の特集として詳細にお伝えする予定です。)
10年目の節目を迎えても、まだまだ須藤さん親子の挑戦は続きます。
街に灯りを、心に幸せを。
室蘭も過疎が進み、モンパリが店を構える母恋商店街も年々営業するお店が減ってきています。だからこそ、知重子さんはモンパリを、街に灯りをともすようなお店にしたいと言います。
「過疎・高齢化は進んでいくけど、元気な街って必要だと思うんです。なんとなく好きだったオレンジをモンパリのカラーにしたのも、『元気が出るしなあ』って思ったからですし。」
今後は、お店でコーヒーが飲めるスペースを広げ、地域の交流の場としても利用してもらえるようにしたい、とのこと。
そして、モンパリの味と交流は、インターネットを通じて日本全国へ。
「幸せを感じますよね、お菓子を食べるのって。泣きながら食べる人っていないと思いますし。だから、モンパリのお菓子を召し上がって頂く人にも、美味しく、幸せを感じて食べてほしいなあって思います。その責任を思うと、『これぐらいでいいか』とか、『失敗したけどいいか』とか、そんなのは駄目だって強く思います。うん、やっぱり、『愛を込めて』ですね(照笑)」
近所に住む常連の方々に、遠くから車で買いに来られる方々に、そしてインターネットやFAXで注文してくれる方々に。「こういう想いでやってきたことがよかったんだ。受け入れてもらえたんだ」と知重子さんは励まされ、また頑張れる。
甘さ控えめのお菓子がたどり着くのは、「幸せ」なのです。
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この特集のお話を伺ってから4年が経過した2012年7月、菓子工房モンパリは店舗移転をしました。
「母恋商店街の旧店舗でずっと営業したいと思っていたのですが、建物自体の老朽化が進んでしまい、移転せざる得ない状況になってしまったんです」。
綾子さんに店舗移転のきっかけを伺うと、こうしたやむを得ない状況が背景にあったとのこと。
新しいお店は、「これまでの店舗があった母恋のなるべく近くで」と1年以上かけて場所を探し、その後お店の建設に半年、という長い時間を経て完成。お菓子に北海道産の小麦を利用するのと同じく、店舗は道産のカラマツ材をふんだんに用いて作り上げられました。
そんな新しい店内に足を踏み入れてまず目につくのが、旧店舗にはなかった広いイートインコーナーです。
「母恋周辺にはお茶を楽しむ場所が少ないですし、道産のカラマツ材を使った明るい空間が出来たので、地域の皆さんにここでゆっくりと時間を過ごして頂けたら、と思っています」。
このイートインコーナーでは、店舗で販売しているお菓子はもちろん、北海道の生乳を活かしたソフトクリームも新たに楽しんで頂けるようになりました。
その他にも、気軽に商品を手に取って頂ける商品展示や、新商品の開発など、店舗移転を機に新たな取り組みにチャレンジしている、とのこと。
菓子工房モンパリの新しい店舗は、室蘭新道を母恋・地球岬出口で降りてすぐのところにございます。
地域の方だけでなく、道外にお住まいの方も、もし北海道旅行の途中に地球岬へ向かう機会があるようでしたら、道路沿いから見える看板を目印に、菓子工房モンパリの新しい店舗にも一度お立ち寄りください。