
後編:一人でも多くの方に来てもらうため
移住体験というきっかけづくりのサポート
大久保さんが浦河町のために行うもう一つの取り組み。それは移住体験のアドバイザーと受け入れ施設の運営です。
夏は8月でも最高気温が25℃程度と冷涼、冬もほとんど雪の積もらない浦河町は北海道への移住を考える方に人気があり、実際に町が行う移住体験も年々受け入れ件数を伸ばしています。
「町外から移住体験の人がやって来ると町役場が私のところに連れてきてくれるので、海では釣りを、山では山菜採りやバードウォッチングなんかを案内してあげているのさ。
エゾフクロウやシマエナガもすぐそこで見ることが出来るんだよ!本当にめんこくてさあ~」
ラーメン店の厨房に立つ合間を見て町内を案内し、移住体験の方が帰る時には「小さな町だけど遠くから来てくれてありがとう」とお土産に浦河餃子を渡す。
こうした大久保さん流のおもてなしをボランティアに近い形で長く続けているのです。
ただ、この移住体験にも課題があるのだと大久保さんは続けます。
「浦河は移住体験の人気がある。だけど、どうしても滞在希望が夏に集中してしまうので一部の希望者はお断りしている状態。移住体験の人が来てくれれば買い物してくれたり町内経済にもプラスになるし、何より来たいと言ってくれている人を断るのは申し訳ないよね」
町も移住体験用の住宅を用意してサポートを行っていますが、冬にぽっかり空いてしまうとなると施設を増やしていくのも難しい面があるとのこと。
この現状を解消するため、アドバイザーからさらに一歩進み、大久保さんは自身で移住体験用の滞在施設を運営しようと決めます。
ラーメン店の二階を滞在施設へと改築し、より多くの方に浦河町を体験してもらえるための場所を作り上げています。
※滞在施設は2017年秋頃からスタート予定となっており、後日このページでもご紹介する予定です。
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1975年に2万人を超えていた浦河町の人口は、2017年3月末時点で1万3千人弱まで減少してしまいました。
「お店で接客していてもお客さんから浦河を離れる報告を受けることがあって、地元で暮らす人間としてはやっぱり寂しいね」
人口減少という大きな流れを、一人の町民の力で変えることはほぼ不可能です。
しかし、大久保さんの目に諦めの色はありません。
日高昆布を練り込んだラーメンや、昆布に加えてこちらも特産の鮭節を活用しただしパックなど次々に新しい商品を作り上げつつ、今後についても
「浦河を知ってもらえるよう、まだまだ新しい商品は作っていく。だってここは山あり海ありで宝の山みたいなものだよ。なんでも作れるよ、作る気になれば。なんでもだ」
と、大久保さんの意欲はさらに前を見据えます。
浦河を知ってもらい、そして賑わいを作るきっかけとなれたなら。大久保さんは今日も浦河への想いと美味しい食材を餃子の皮に包みます。