
前編:ぎょうざの皮に包む
生まれ育った大好きな街の人口が年々減少し、衰退していく。
もし皆さんがこんな状況に直面したとしたら、どうされますか?
この特集ページでは、地域の衰退に立ち向かうラーメン店店主の取り組みについてご紹介致します。
きっかけは、日高山脈に自生する行者にんにく
えりも岬から西におよそ50kmにある北海道浦河町。ラーメン店「まさご」の大久保さんは、馬産地としても有名なこの町で生まれ育ちました。
「浦河は南に太平洋が広がり、北には日高山脈がある。海あり山ありで美味しい食材もたくさんあって最高の場所ですよ」
大久保さんは平成8年に家業を継ぐため帰郷し、従来の銭湯に加えて新たにラーメン店を開きます。
そしてこのラーメン店が、浦河町PRに向けた1つ目の舞台になります。
開店当初のまさごは一般的なメニューが並ぶラーメン店でしたが、お客さまとのちょっとした会話から転機が生まれます。
浦河町の春の味覚「行者にんにく」を餃子の具材として活かすことが出来ないか、大久保さんは考えるようになったのです。
行者にんにくは、山にこもる行者が栄養の源にしたと伝えられる、にんにくに似た強い香りの山菜です。
香りや美味しさはもちろんのこと、その栄養も存分に活かしたい。そう考えた大久保さんは行者にんにくの専門研究を行う先生にアドバイスをもらいながら試作を繰り返し、「行者にんにく餃子」を作り上げます。
そしてこの行者にんにく餃子を皮切りに、まさごの餃子に次々と浦河と北海道の美味しさが宿るようになります。
「これでもか」を決して手放さない
大久保さんが次に選んだ素材は、眼前の太平洋で採れる特産の日高昆布です。
日高昆布を刻んで餃子の餡に入れ、さらに粉末にして皮にも練り込むことで、昆布の旨み・風味を余すところなく楽しめる「まろやか黒昆布餃子」を作り上げます。
その後も健康効果の高い玉ねぎを利用した「さらさらレッド餃子」など、浦河と北海道の美味しさを包んだまさごオリジナルの餃子は計5種類へと広がり、餃子を通して浦河のことを知ってもらえればと「浦河餃子」と名付けることにしました。
そしてこの5種類の浦河餃子には、素材の「種類」だけでなくもう1つの特徴があります。それは素材の「量」です。
「餃子の機械メーカーの人から『全国に機械を納品しているけれど、こんなに材料にお金をかけているところはない。もっと使用量減らした方がいい』と言われましたし、餃子作りを手伝ってもらっているパートさんにも『昆布入れすぎじゃないですか?』って言われます。
でも私は素材の量を減らそうとは思いません。『これでもか!』と浦河の食材をたっぷり使うからこそ美味しい餃子が作れるんです。」
以来、浦河餃子は道内・全国のデパートやイベントに置いて頂けるようになり、今日この時も浦河の名前を静かにPRしています。
そして大久保さんは、人口減少が続く浦河町のためにもう一つの取り組みを進めていきます。(後編に続く)