前編:無我夢中で走り続けたスタートの日々
一人の主婦から、お店の経営者へ
※こちらは店舗移転前の2008年9月にお聞きした内容になっており、新店舗の紹介記事を後編のこちらに追加しています。
室蘭市母恋の商店街に店を構える、菓子工房モンパリ。お店を切り盛りする須藤知重子さんは、実は平成11年にこのお店を引き継ぐまで、スーパーで働く一人の主婦でした。
主婦から経営者へ。その転機は、「若いころから『お店をやりたい!』と思っていたのと、50歳になったとき、このまま主婦で終わるのはもったいない」という知重子さんの想いと、モンパリ店舗譲渡の話を聞いたことでした。
「やれるところまでやってみよう」
知重子さんは決意を固め、単身モンパリに飛び込み、店舗を引き継ぐことになりました。
ただ、スタート当初は苦労の連続。モンパリを引き継ぐ前から趣味でお菓子は作っていたものの、家庭で作るのとは量も機械も違います。スタッフの作業を見て覚えた技術もありましたが、お店で販売するケーキやお菓子の種類は多く、試行錯誤が続く日々。
これまでの味から砂糖を控えめにする、という大きな方向転換を決めたときも、一部の常連さんから批判的な声もあったそうです。
そんな辛い日々を支えたのは、「いいものを作れば、お客さんはついてきてくれる」という一心でした。
試行錯誤の中で知る、「人との繋がり」
スタート当初、特に知重子さんを悩ませたのが「チーズケーキ」でした。
「チーズケーキがね、割れちゃうんですよ。どうしても表面にひびが入って見栄えが悪くなっちゃう。何度も失敗を繰り返したけど、どうしても上手く焼くコツがつかめなかった。」
折しも地元中学校に200個ものチーズケーキを納めないといけない日が刻々と近づいており、なんとしてもチーズケーキを綺麗に焼かなければなりません。しかし、やっぱり上手く焼けない。失敗したチーズケーキと焦りだけが募る日々。
その時、救いの神が知重子さんの前に現れます。
取引先から札幌のお菓子の先生を教えてもらい、実際に教えてもらえる機会にも恵まれたのです。
見事なチーズケーキが焼き上がったとき、「いやあ、有難いなあ、って。どんなに自分一人で頑張るって言っても、いろんな人に助けてもらってこそなんだな、って。人との繋がりを含めての店づくり、商売なんだって、そのときに痛感しました。」
モンパリを引き継いで、来年でちょうど10年。
あっという間の10年を振り返れば、泣きながらも勉強し、そして出会いに恵まれた楽しい時間だったと、知重子さんは語ります。(後編に続く)